Green Dance Collection*人魚姫
一人の老人が
海辺をさまよって来ました。
もうとても歳をとっていて、体も悪くなっています。
彼が思い出すのは、若かった時に
道化として王子様に仕えていた時の
お城での楽しく華やかな暮らし、
そして一生でただ一人、自分が心から深く愛した
美しく悲しいお姫様のことでした。
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青く深い海の底の、美しいお城で生まれた人魚姫は
やさしいお母様やお姉様に囲まれて
幸せに暮らしていました。
15歳になった人魚姫が初めて海の上にあがると
そこには美しい王子様が見え
人魚姫は一目で彼を好きになってしまいました。
すると突然嵐が起こり、海へ投げ出された王子様を
人魚姫はやっとの思いで助けたのですが、
彼は修道院の娘に自分が助けられたと思い、
お城に戻ってしまったのです。
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どうしても王子様に会いたい人魚姫は
お姉様に教えてもらった魔女に頼んで
人間の足を手に入れました。
でもそのかわりに、その美しい声をとられてしまったのです。
魔女は言いました。
「忘れちゃいけないよ。
もし王子様がほかの誰かと結婚したら、
その次の朝おまえの心臓は破裂して海の泡になってしまうからね。
でも誰かほかの人間が、本当のまごころをもってお前を愛して
お前がその人間と結婚すれば、お前は人間として
幸せに一生を暮せるだろうよ。」
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王子様に助けられた人魚姫は、お城で幸せに過ごしていました。
ある日、船の上で華やかな舞踏会が開かれ
招待された隣の国の王女様を見て、王子様はとても驚きました。
「彼女こそが私の命を救ってくれた方です。
私はこの王女様と結婚します。」
人魚姫の目の前は真っ暗になりました。
王子様のために、人魚姫は家も家族も捨て
美しい声もあきらめたのです。
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お姉様は魔女に頼んで、
自分の美しい髪の毛と交換にナイフをもらいました。
「このナイフで王子の心臓を刺しなさい。
王子の血があなたの足にかかったら、
元通り人魚に戻って私たちと暮らせるから。」
でも人魚姫には、王子様を殺すことなどできませんでした。
海の泡となるはずなのに、人魚姫は空へと昇っていきました。
天空の女王様は言いました。
「人魚姫、これからは空気の精になって私たちと一緒に
その優しい心を世界中の人届けましょう。
悪い病気で苦しむ南の国の人たちに涼しい風を送り、
悲しくて泣いてる人には、やさしい花の香りを送るのです。」
お日様のほうに手をさしのべると、人魚姫は頬に
生まれてはじめて温かい涙がつたうのを感じました。
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